神社の祭
権禰宜 山田幸博
今回の神社だよりは、神社で行われる「祭」についてご説明します。私達神職は、『先ず神事(まずしんじ)』といわれる程、神事を大切にしています。その神事の実践の場が「祭」です。これから全国で行われる秋祭りを前に、皆さまに「祭」への理解を深めて頂ければ幸いです。
Ⅰ 祭とは
神社のお祭は、さまざまな賑わいもあって、楽しく華やかなイメージが強いと思いますが、その核心は心身を清め、神に対面し感謝の心を捧げる神事にあり、イベント的なものとは少々異なります。
「まつり」の語源は、神の力に従い奉仕する「まつらふ」という言葉に由来するといわれています。「まつり」には「まつ(待つ)」という意味も含まれていて、かつて神は遠いところから来られて、山や岩、木などに宿ると考えられていました。つまり神が現れるのを「待ち」、神威に服することが「まつり」であると言われています。
いつの時代も人々は、こころを尽くしたお供え物(神饌)を捧げて祈り、神をおもてなしして、日頃の神恩に感謝してきました。そして、人々は「まつり」に参加することで、ともに生きる人たちと喜びを分かち合ってきたのです。
Ⅱ 祭の種類
(1) 神社で行われている祭には、大祭、中祭、小祭があります。
① 大祭(ア~ウを三大祭といいます) 《》は速谷神社の実施日です。
ア 例祭
神社にとって最も重要な神事で、通常、年に一度、行われます。俗に例大祭とも称される。速谷神社ではこの日にあわせて、氏子による神輿の渡御や広島県内に伝わる神楽の奉納なども盛大に行われます。《10月12日》
イ 祈年祭。
「春祭り」。古くは「としごいのまつり」といい、奈良時代からの伝統ある祭儀で五穀豊穣や産業発展を祈る祭。《3月17日》
ウ 新嘗祭
「秋祭り」。「しんじょうさい」とも「にいなめのまつり」とも呼ばれ、その年に収穫された新米を神前に供え、豊作を感謝するとともに神威を蒙る祭。《11月23日》
エ 交通安全大祭
古代より「山陽道の守護神」として崇敬をあつめる速谷神社では、正月7日、その年一年間の交通安全を祈願しています。交通安全祈願の大祭は、全国でもほとんど例がありません。《1月7日》
② 中祭
ア 歳旦祭
元旦に行われ新年を祝い、皇室の永遠と国家の繁栄、平和を祈る祭。《1月1日》
イ 元始祭
1月3日に行われ皇室の永遠の発展と国運の盛大を祈る祭。《1月3日》
ウ 紀元祭
2月11日の建国記念日に国家の発展を祝う祭。《2月11日》
エ その他
昭和祭《4月29日》、神嘗奉祝祭《10月17日》、明治祭《11月3日》、天長祭《12月23日》があります。
③ 小祭
大祭及び中祭以外の祭祀
ア 月次祭
国家の発展や氏子・崇敬者ならびに社会の安定と平和を祈る祭祀で、1日や15日などに毎月行われる。(速谷神社では1日と12日)
イ 日供祭
毎日、早朝に神様に神饌を捧げ、日頃の感謝とその一日が平穏無事であることを祈願する祭。(速谷神社では毎朝午前6時に行っています)
④ 臨時の大祭
ア 式年祭
定まった年ごとに行われる祭典で、式年とはある一定の期間を表しています。御鎮座日など神社にとって特にゆかりのある年に行われることが多い。7年毎に行われる諏訪の御柱祭や12年目毎に行われる鹿島神宮、香取神宮の神幸祭などがあります。
イ 遷座祭
社殿の造り替えに際して、ご祭神をお遷しする祭典。
ウ 他に合祀祭、分祀祭などがあります。
(2) 民間の祭
民間の祭は「生活のなかの祭り」ともいい、「人生儀礼」と「年中行事」に大きく分けられます。
① 人生儀礼
人生の節目ごとに神様への祈りと感謝を捧げること。
(例)初宮参り、七五三祭や入学、卒業、就職の報告、成人、還暦などの年祝いの他、結婚式、葬式、厄祓いも人生儀礼に入ります。
② 年中行事
一年を周期として繰り返し行われ、四季折々の同じ時期に行われる共同体的な行事。宮中に由来するものと、私達の生活に由来するものがあります。
ア 生活に由来するもの
とくには農耕文化を基盤とした農耕儀礼が多いです。
(例)初午、御田植祭、虫送り、風祭、霜月祭など。
イ 宮中に由来するもの
宮廷の年中行事が民間に流布したもので 5月5日の端午、7月7日の七夕や9月9日の重陽の節句、大祓など。大祓は半年の間に知らず知らずに犯した罪、積り積もった心身の穢れ、一切の災いを祓い清め、清浄な本来の姿を取り戻すための祭祀。宮廷では六月と十二月に行われていた。(速谷神社の6月30日の「夏越の大祓」は大勢の参拝者で賑わう)
③ 「生活の中の祭」で、①②に属さないもの
よく行われる地鎮祭、上棟祭、竣工祭があります。
Ⅲ 速谷神社の祭典・神事
境内の車祓所に、1年の祭典・祭事の看板があります。来られたときは、是非ご覧ください。
速谷神社では、これら年間の神事以外に、初宮参り、七五三祭等の人生儀礼はもちろんのこと、地鎮祭や竣工祭の他、特に交通安全の神様として知られ、県の内外から多くの方が参拝されています。
第14号 平成26年9月1日